表現行為としてのオーディオ 音の道一本で生きていこうとすると、自分が目指していることの行き先ということを見極めていなければ、大袈裟に言えば、人生に迷いを生じてしまう。不惑の歳をとうの昔に通過している身としては、「自分にとってオーディオとはなんだ」ということを自分の言葉できちんと説明がつくようにしたい。そう想いながら、なおかつ結論は見えていたにも関わらず、長年の間に凝り固まった思考回路をほぐすのには、さらに時間が必要…
待ち望んだ一冊の本が世に出た。ジャズオーディオ・ウェイク・アップ/山口孝(著) これはやはり、ジャズの本だ。いまやオーディオが存在しなければ聞くことが出来ない、ジャズがジャズで合った時代のジャズを、21世紀の今、オーディオを通じてどう聴くか。それが見事に、彼の言葉で描かれている。ジャズは過去に多くの評論家が論じ、そして書いた。さらに今もかつてと変わらぬ次元で書き直されている。けれどここに書かれたジャズは、まるで位相が違う。ジャズミュージシャン「山口孝…
(特別編)audio sharing ML発言集 今や伝説的にさえなった故岩崎千明氏、故瀬川冬樹氏・・・そういう人たちのオーディオ評論文をWEB上に掲載しているMさんと知り合ったのは数年前のことだ。古い雑誌から気の遠くなるほどの活字をデジタル化していく作業は並大抵のことではないだろう。Mさんのオーディオへの限りない情熱と、かれこれ中年にさしかかろうという年齢なのに十代の青年のような爽やかな笑顔が、会う人を皆元気にしてくれる。その彼からメ…
喫茶サタディサン(イルンゴ導入記) その彼はまだ30代の前半。十分に若く、人生に対してすこぶる精力的だ。後にきいたことだが10代ですでに身を起こし、自らの責任で大勝負にでて、ビジネスに成功しポルシェをかっ飛ばすような凄い「少年?」だったらしい。恐ろしいほどに早熟で、凡人には計り知れない仕事度胸を持った人のようだ。昨秋のある夕方、その彼から電話を貰ったのが出会いである。友人の持つイルンゴ製オーディオケーブルを聴かせて…
心の中で鳴る音(新宿ガンジー、後日談) それは昨年の晩秋のことだった。新宿さくらや裏にあるカレーショップ、ガンジー。この店のオーナーMさんから突然メールを頂いた。このお店のことを僕がWEBに書いて一月ほど経っていたのだが、メールを読んで僕は驚いてしまった。あの音は本物だった・・・。私信なので全文を公開することは控えるけれど・・・。Mさんのメールには、「音のイメージは30年位も前のピットインが原点にある」「4-5…
音楽としてのバランスを崩す勇気 オーディオは、自らの中で鳴る音楽を目の前に出そうとする行為だ。内で鳴り響く音と、目の前で鳴る音との差異が大きいということは、感覚の鋭い人種にとって耐え切れない状況なのだ。オーディオの装置はケーブル1本変えても音が変わる。変わった変わったとはしゃいでいる内は可愛い。そのうち、あちこち変えて収拾がつかなくなる例のなんと多いことか。細部に気を取られ、全体のバランスが崩れてしまうことが、…
音の奥行感とオーディオの性能 オーディオマニアなる人種はオジサンばかしかと思っていたら、最近は僕の所に若きサラリーマンや学生さん達までが問い合わせをしてくる。音の不思議な魔力に引き寄せられた若者が、一気にオーディオの世界にのめり込んでくる。吸い取り紙のように、僕のため込んだ知識を吸収してくれる。遠慮無くどんどん奪い取ってくれ!まあその分、僕は彼らの若い情熱を貰うけれど。でもオヤオヤと思うこともある。彼ら、不幸にも?モ…
小型SPを鳴らす 最近小型SPを鳴らすのに快感を覚えている。何と云っても小型SPで大型並の音を出せば拍手喝采だ。逆に大型を導入して鳴らせなければ、日々憂鬱、メシも不味いし、仕事も手に着かない。いい音って何だ、というと百も二百も理屈っぽい定義がなされそうだ。が、小型を大型のように鳴らす、というと連想する音がそれほど違わないらしい。商売柄、ときどき試聴会じみたことをやる。何人か集まって貰って、衆人注目…
電話機の音 ADSL全盛の兆しが見えるこのごろだが、僕はいまだにISDNを愛用している。ADSLに申し込もうとしたら、電話番号が変わる・・と云われてしまい、気持ちが萎えた。で、電話するにもパソコンでインターネットするにも、TA(ターミナルアダプタ)という小さい機器が必要不可欠になる。こいつはISDNというデジタル回線に乗ってくる音声データをアナログにしてくれる、いわばDAとかADの役割も担っている機械らしい…
新築jazz喫茶CANDYのチューニング VOL.7 新築jazz喫茶CANDYのチューニング千葉市稲毛、駅を降りてわずか2分。商店街から道一本を隔てた住宅街に一歩踏み込んだところに小洒落た店ができた。JAZZ喫茶CANDY。以前にも紹介したが、そのころは駅の反対側、ビルの地下の暗闇にあった。ところが昨年春、CANDYのオーナーは突然ヒラメいたらしい。あれよあれよという間に店を新築して広く明るい雰囲気に店を豹変させた。僕が、オー…