最近の若いオーディオマニア層は、ご夫婦で仲良くオーディオも楽しんでいらっしゃる方が多い。イルンゴを設立したおかげで、僕は沢山のご夫婦とお知り合いになれた。しかし、どちらの奥方も積極的に「音質」決定に関与していることに、時代の流れを感じている。
僕のように、オーディオ装置の置いてある部屋、(それはリビングであることが多いのだが)、そこに伺って、「何かつまらない」という現状の音を改善して、導入後の効果を「音として証明」しないと仕事にならない職業は、マニア的な「解像度が上がった」とか「高音が延びた、低音が出た」程度では売り上げに直結しない。
もっと、極端にいえば「音の革命」が起こらないと奥方に認知されないのだ。
「音の革命」とは、つまるところ、明確に、聴いていて音楽が楽しくなる音だ。
確かに僕はアチコチのお宅で、音楽が楽しくなった、と云われるようなチューンをしている。このレコード、こんなに良かったんだあ!と喜ばれるときが僕も一番嬉しい。しかし、それはCDに優れた音楽が入っていたからである。(僕は眠っていたその音楽のエッセンスを呼び起こすだけです)
名演名盤、歴史的価値がある・・・、等と云われてもその良さがわからない・・・という場面に頻繁に遭遇する。それが音が良くなった途端、「あ、そうだったんだ」と納得してもらえる。
いい音って、意外とわかりやすいものなのである。
オーディオ雑誌など読まない奥様方は、オーディオ評価用語もご存じない。ただ素直に音楽を聴いてくださる。しかも瞬間的に判断する。ある時は冷酷に、あるときは満面の笑みで、判決を下す。
軍配はいつも心がウキウキするような音に上がる。
音マニア諸君、良い音は解像度が高いとか低音が出たのとか、そういうことではないと思う。評論家のような部分聴き評価はとりあえず横に置こう。あれは言葉で音を説明するための便法だ。音楽の核心を、一瞬でぱっと捕まえる聴き方。それを目指そうではないか。