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Vol.5 音楽が楽しくなる音  Vol.6 微少信号にきをつけろ!
Vol.7 新築jazz喫茶CANDYのチューニング  Vol.8 電話機の音



VOL.5 音楽が楽しくなる音

最近の若いオーディオマニア層は、ご夫婦で仲良くオーディオも楽しんでいらっしゃる方が多い。イルンゴを設立したおかげで、僕は沢山のご夫婦とお知り合いになれた。しかし、どちらの奥方も積極的に「音質」決定に関与していることに、時代の流れを感じている。
僕のように、オーディオ装置の置いてある部屋、(それはリビングであることが多いのだが)、そこに伺って、「何かつまらない」という現状の音を改善して、導入後の効果を「音として証明」しないと仕事にならない職業は、マニア的な「解像度が上がった」とか「高音が延びた、低音が出た」程度では売り上げに直結しない。
もっと、極端にいえば「音の革命」が起こらないと奥方に認知されないのだ。

「音の革命」とは、つまるところ、明確に、聴いていて音楽が楽しくなる音だ。
確かに僕はアチコチのお宅で、音楽が楽しくなった、と云われるようなチューンをしている。このレコード、こんなに良かったんだあ!と喜ばれるときが僕も一番嬉しい。しかし、それはCDに優れた音楽が入っていたからである。(僕は眠っていたその音楽のエッセンスを呼び起こすだけです)
名演名盤、歴史的価値がある・・・、等と云われてもその良さがわからない・・・という場面に頻繁に遭遇する。それが音が良くなった途端、「あ、そうだったんだ」と納得してもらえる。
いい音って、意外とわかりやすいものなのである。
オーディオ雑誌など読まない奥様方は、オーディオ評価用語もご存じない。ただ素直に音楽を聴いてくださる。しかも瞬間的に判断する。ある時は冷酷に、あるときは満面の笑みで、判決を下す。
軍配はいつも心がウキウキするような音に上がる。
音マニア諸君、良い音は解像度が高いとか低音が出たのとか、そういうことではないと思う。評論家のような部分聴き評価はとりあえず横に置こう。あれは言葉で音を説明するための便法だ。音楽の核心を、一瞬でぱっと捕まえる聴き方。それを目指そうではないか。




Vol. 6 微少信号にきをつけろ!

最近、インシュレータを開発した。こういことやっていると、一部のイルンゴファンから、アクササリばかりやらず、コンポ本体を早くやれ、とお叱りをうけたりする。けれど、僕には周辺機材を開発しないといけない、れっきとした理由があるのだ。 だから少しばかり、言い訳をさせて欲しい。

80年代に海外で高級ケーブルメーカーが話題となり、90年代は日本でもケーブルが全盛時代となった。同様に、インシュレータやら小物の類までが、多種多様、店先を賑わしている。 ある店などコンポーネント本体の売り上げよりアクセサリーの方が多い、とさえ言われる。
この原因はなにか?
時代の推移を見ての推測だが・・・。
従来のアナログプレーヤに変わってCDプレーヤがオーディオの主流になった頃と、アクセサリ類の台頭が奇妙に一致している、と僕は思う。もちろん直感的やぶにらみだから、統計学的数字の根拠はない。
CD時代になって、アナログ時代よりダイナミックレンジの下限が、マイナス方向におよそ36デシベルほど下がった。家庭での再生時、最大音圧は、昔も今もそう変わらない。とするとデジタル時代は同じ再生系ラインが扱う信号の下限が、単純に下がった、といえるのではないだろうか。
CDプレーヤの出力も、プリアンプもパワーアンプも、昔よりずっと微細な信号を扱っているのだ。

古くからのオーディオマニアの中には、アクセサリーにこだわることを、本筋から外れているかのように揶揄する向きもある。大体そういう方は、CDの音をアナログ時代の音にして、つまり、細かい音を丸めてバランス取る、そういう傾向を感じる。だから、そういう方の音は空間、余韻が少なく、世間では音像派と呼ばれているようだ。
逆にCDで徹底追及した人が出すアナログの音は、微細な音による空間表現も得意であるように思う。
ぼくのようにパッシブのフェーダーを使うとすぐ気付くことだが・・・。
パッシブフェーダーはDACやCDプレーヤの出力を、単に絞るだけ。僕は夜中、40デシベルとか、あるときはマイナス60デシベルくらい下げて聴く。そんな小さな音で何が聴ける、なんて言わないで欲しい。
素っ裸になると部屋の空気のわずかな動きまで感じられるように、深夜の微少音は、音のミクロの動きまで聞き取れるようになる。
で、そのときパワーアンプに入力される信号レベルは?
CDプレーヤの出力が2Vだとすると、フェーダーの出口は、マイナス60デシベルのときで2mV。これは曲の中の最大音だから平均値は、さらに1桁下がって0.2mV。さらにさらにピアニッシモだと、・・・・、おいおい、トンデモナイ微少信号だ。
つまりパワーアンプは、かつてのMCカートリッジ用ヘッドアンプ並の信号レベルさえも、場合によっては扱わされるのだということを認識して欲しい。
けれど、一方、同じ筐体の中で、あるときは数100wの大出力も要求される。しかも放熱もしないといけないからと、放熱ファンのモーターが唸っているアンプさえある。
こういう機器はもう僕の神経とは相合れない。 過酷な命題を背負った機器。それがパワーアンプなのだ。
けれど、MCヘッドアンプのような繊細な作りをしたパワーアンプがどこにあるのか。(ほんのわずかだけ、相当意識しているものがあるけど)
微少信号扱う意識がないから、マイクロフォニックノイズに対する構造が取られていない。
かくしてパワーアンプは、機器の置き台やインシュレータが絶大な効果を発揮する場所となった。
なに、我が家はパッシブフェーダーでなくプリがあるから平気だろう、って?
それは大きな勘違い。
プリアンプは、文字通りアンプ、増幅器だ。その増幅する分だけ先に、プリ内蔵されているボリウム(フェーダーと同じ役割)で、もっと絞らないといけない。そうなるとプリは、さらに超微少信号を扱うことになる。
すなわちプリのラインアンプにはMCヘッドアンプよりさらに、少なくと1桁下まで、僕の場合は要求したくなる。
残念なことに、現代のアナログ回路のSNは理論的に、その領域を満足できないことが判明している。
プリを入れると、聞きやすいバランスの取れた音になることもある。しかし良く聴くと、細かい音を丸めているのである。情報を欠落させてバランスを取る。オーディオでは昔からある、一種の「逃げ」の手法だ。CDプレーヤにトランスを入れるのも、根本的には同じ理屈である。
僕はいいたい。
デジタルのDレンジは既に素晴らしい。
けれど、もうすでに、電気信号として気楽に、電気の理屈をを知らないくてもいいはずのオーディオユーザーが扱うには、過激なほどデリケートな領域に入っているのではなかろうか。
微少信号を扱う電子回路の実装に詳しい方なら、世界中の多くのオーディオ機器の大半が、磁気や振動に対してきわめて無頓着な設計なことに気づくだろう。
CD登場の初期、音が悪いとされたのも頷ける。
アナログ時代とさして変わらない筐体構造では、置き台、インシュレータの影響が絶大なのは当然の帰結のように思えてならないのだ。
しかし、イルンゴの製品がそういう環境で使われるなら、なんらかの対策をしなければ正当な評価も得られず、実力も発揮できない。これは自分で解決するしかない。
で、僕はここ数年、アクセサリと言われる周辺機材の開発に力を注いできたのである。
おかげで・・・。
イルンゴのオーディオボードと皮を積層したインシュレータが、非常に好評です。




VOL.7 新築jazz喫茶CANDYのチューニング

千葉市稲毛、駅を降りてわずか2分。商店街から道一本を隔てた住宅街に一歩踏み込んだところに小洒落た店ができた。JAZZ喫茶CANDY。以前にも紹介したが、そのころは駅の反対側、ビルの地下の暗闇にあった。
ところが昨年春、CANDYのオーナーは突然ヒラメいたらしい。あれよあれよという間に店を新築して広く明るい雰囲気に店を豹変させた。
僕が、オーディオの友人でEMT930を3台も4台も所有し、そのゴム製アイドラまで精密研磨してしまう人を紹介したのがきっかけらしい。選び抜いた木材をふんだんに使った瀟洒な喫茶店を営むその友人の店舗は、明るく健康的だ。
だから新店舗への移転は表面上は、70年代に流行した黒ずくめ店舗からの脱出を計ったかに見える。けれど、僕は密かに思っている。オーナーの林さんは、旧店舗のステレオスピーカーの左右がくっついてしまうような、最悪の音響空間からの脱出を望んだにちがいない、と。

2002年4月。店舗が完成した。スタジオ設計の大ベテラン、若林音響の若林社長が大御所的見地でアドバイスをなさったその空間が完成した。響きを生かした無駄の無い設計。どんな高価なオーディオ装置をみても羨ましく思ったことは無い僕だけど、正直にいって、この空間は羨ましい。
機材は旧店舗のものをそっくり持ち込んだ。スピーカーを新調する計画も、いっとき浮上したけれど、候補に挙がったものはドライブアンプも含めて1000万円近くかかるので断念したそうだ。
広い空間をわずか140リッターの箱に入ったJBLの15インチで鳴らせるのか?
ご本人は相当な心配をしていたようだ。けれど相談された僕は断言した。全く心配ない、と。
それよりも、と、電源周りとスピーカーのセッティングに気を配るようにアドバイスした。その結果、30個以上もあるこの一軒家の壁コンセントに、すべて独立のブレーカーがついてしまった。ブレーカーは分厚い木製のボードにマウントされている。ブレーカーを固定するネジも全て非磁性体ネジ。パワーアンプなどに給電するコンセントは、周囲に一切の金属を廃した露出コンセントタイプだ。これはイルンゴ製で、電極は純銀が厚くメッキされている。

4月の某日曜日。
オーディオ好きな常連さんたちも集まって、スピーカーをあげたり下げたりのセッティング調整をすることになった。
このあたり逐一詳しく書くと、だらだらと長くなるので省略。けれど一種の公開チューニングとなったので、皆さんが一番驚かれたことを書いてみよう。
左右の音質の違い。その原因は2種類。 一つは置き台とウッドブロックとSP本体との間に存在するわずかな位置ずれ。左右の置き台の、木の目を揃えることで、急激に音質が揃うということ。 もう一つは、パワーアンプの位置。左右のSPから等距離のところに置かないと、定位はおろか音質までアンバランスになること。
立ち会ったマニアの方たちは、とても驚いていらした。

CANDYの装置全体の中で、他のグレードに比して、スピーカーBOXとネットワークあたりに未解決の箇所がある。そのせいか目に見えるところだけを攻めると、内部の未開発地域がときどき悲鳴を上げる。
で、その一歩手前のところに、熟した果実の味があるようだ。でも、こういうときはコンスタントに音を維持していくことにも、大変な苦労がいる。
先日もEMT930プレーヤの置き台(鉄製40kg)を導入したら、隣のCD(スチューダ730)の音がすっかり調子を崩し、悪戦苦闘したそうだ。
後日、アナログレコードをアサリ続け、最近オーディオにもすっかり目覚めてしまった某カメラマン氏を連れて訪問したところ、大感激。彼はその後、暇を見つけては遊びに行っているらしい。店内の写真は彼の作。(注:クリックで大きな写真が開きます)

建築間もないこの夏、コンクリートが出す猛烈な湿気に対抗して、ドライヤをだしたり、ねじ回しでネジを締めたりゆるめたり・・・、音の維持にかなり苦労しているらしい。

連日9時間。日々変わる音にめげず、オーディオに真っ正面から向かっているjazz喫茶CANDY。日本全国で、今時珍しい店である。
是非、お立ち寄りを。
当然、オーナーの感性からなる音だが、ちょっとだけ、イルンゴの音の匂いも下地として混じっている。
もし調子よく、小型SPとは思えない伸びやかな朗々とした音が出ていたら、拍手を!
http://members.tripod.co.jp/jazz_candy/
(043−246−7726)




VOL.8 電話機の音

ADSL全盛の兆しが見えるこのごろだが、僕はいまだにISDNを愛用している。ADSLに申し込もうとしたら、電話番号が変わる・・と云われてしまい、気持ちが萎えた。で、電話するにもパソコンでインターネットするにも、TA(ターミナルアダプタ)という小さい機器が必要不可欠になる。こいつはISDNというデジタル回線に乗ってくる音声データをアナログにしてくれる、いわばDAとかADの役割も担っている機械らしい。だから僕の仕事場所では普通の電話機をこいつに接続して会話をすることになる。

ある夏の夜のこと、雷が発生した。落雷も一度や二度でなく、連続して爆音をとどろかせていた。大雨も屋根を叩きつけていた。
いつものようにパソコンに向かってメールを読もうとしたが、接続されない。最初はプロバイダの接続がよほど混雑しているのだろうと思っていたが、何度やっても繋がらない。調べると電話も繋がらなくなっていた。これは一大事と電話局に携帯を使って電話して回線を調べて貰うことにした。以前にも何回か回線工事で不通になったことがあるから、又か、と高をくくっていたが、今回は外れた。どうやらTAがやられたらしい。
昔の僕ならきっと故障個所をみつけて・・・なんて遊んでいたかもしれないが、今はそれほど暇な身分ではない。
翌日、大慌てで適当なTAをパソコンショップで購入。急いで入れ替えたら一発で復帰。メデタシメデタシ、といいたいところだが、今回の話の本題はこれからだ。
電話の音がまったくひどいモノになってしまったのである。比較すると今までのものはアナログレコードのような落ち着いた深みのある音だった。それがなんと、コードレス電話によくあるナローでやかましい音に成り下がったのである。
TAにも音質がある!と、そのとき気が付いた。かといって、買ってきてしまったからには今更交換するわけにもいかない。第一、TAの試聴!なんて云ったらパソコンショップのお兄さん、目を点にすることだろう。
しかし、これでは接客に支障が出る。音質を売り物にしているくせにイルンゴの電話はひどい音だ、そういう噂が全国的に流布されたら倒産の危機だ!と、心中焦ったのだが、そういうそぶりを見せずに、僕はじっと考えた。
この騒々しい電話の音はなんだ?チェック用に接続した天気予報の無機質な声を聴きながら、しばし沈思黙考。
こういうときは、機器の周りを色々見渡すに限る。
よく見ると新しいTAは樹脂ケースが薄っぺらく、軽い。どうも筐体がチャチになったのだと睨んだ。
原因は振動問題か。そこで僕は、10cm幅の木材を下に敷いてみた。
俄然良くなった。
おお!これではハイエンドオーディオと同じではないか。僕は驚愕の声を上げたが誰も聞いていない。
で、嬉しくなって親しい知人に電話した。双方で音質チェック開始だ。TAの下に敷いた木材に気を良くした僕は電話機の下にも、90mmのウッドブロックを入れてみた。もうデジタルコードレスが、ひも付き黒電話の雰囲気にさえ似てきた、という。電話の向こう側に伝わったのである。
なにしろ木材といっても身近に有るモノはアピトン合板という音響用に作った相当高級なものだから、悪かろう筈はない。 電話の声の変化にも面白がっている。オーディオ屋というのは、悪い音だけには耐えられない性分らしい。
それにしても、高級オーディオ機器を集めた装置ならともかく、文字通り電話帯域しかない「電話」の音質対策が、ハイエンドオーディオ的手法で格段に向上するとは驚きだった。デジタル回路はアナログより振動に弱い・・・・。

さてその後、すっかり音が良くなった電話機の下にはgrandezza205という商品が今日も敷かれている。お陰でとても売れ行きがよくなった・・・・というほど世間は甘くないけれど、grandezzaの音の良さを知りたい方は、是非電話を下さい。

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